*写真はこちらを参照してください
色々なことがあった・・
色々なことを考えさせられた・・・
その時の気持ち思ったことを忘れないために、ここに記しておこう・・
早朝から成田空港のカウンターは長蛇の列だった。
睡眠不足でボーっとしたまま、いつ果てるとも知らない列の中にいるとJALのおねーさんから声をかけられた。
「恐れ入りますが、PALがオーバーブッキングでしてJALに代えていただけないでしょうか?」
「オーバーブッキング?なんだそれ?でも並ばないですむのなら何でもいいですよ?」
実は二つ問題があったのだが、その時は全く気が付かずにいつものように目先の甘い言葉につられてしまった。
1つは到着ターミナルが変わること。待ち合わせは別のターミナルだったのだ。
もう1つはせっかく用意したPALのマイレージが役に立たないこと。
「まあいいや!なんとかなるだろう・・」
JALのほうが機材の関係か少し狭く感じたが、席につくとすぐに眠ってしまった・・・
隣の席は空いたままだったし、あちこちに空席もあった。
ターミナルワンは古い空港だ。
着陸すると私は急にトイレに行きたくなりトイレを探した。
トイレを見つけて中に入ると横の壁にシャワーがついていることに気づいた。
「なんだ?これ?」
それは巨大なウォシュレットが便器の中には格納できなくて、単に壁から出ているということに気がつく。
この巨大ウォシュレット、トリガーを引くと水圧が異常に高くてちょうど洗車場にあるスプレーガンのようである。
「ぷしゅー!!!」
私のお尻がこの水圧に耐えられるか考えているとすでに便意は失せていた。
免税店で頼まれたたばこを買い「どこに行けばよい」のか電話で尋ねた。
二人ともdocomoの同じ機種で国際ローミングしているからとても便利である。
でもよくよく考えてみると、数十メートル先の相手と日本経由で話しているわけだからマヌケな話ではあるが・・・
「ハニー!」と手をふる君の顔を見た時には
「これで今日泊まる所を自分で探さないですむ・・」とは思ったんだけど・・
後々「自分で探した方がマシだったんじゃ」と思うことになるとは・・トホホ
空港から車で約1時間、ダナラホテル
http://www.danarra.com/
にチェックインしてから異変は起こった。
次から次へと人が増殖していくのだ。
姉妹?兄弟?息子?娘?親戚?従姉妹?甥?姪?・・・・ワカンネェ!
6人を超えるとすでに私の身分ははるばるやって来た恋人ではなくなった。
12人を超えると単なるサマーキャンプのボランティア兼スポンサーへと変わった。
こういう時は開き直るしかないし、その方が今後楽しく過ごせるというものだ!
セブやマニラでの経験を無にしてはいけないし、「話が違う!」なんて怒るのは野暮天のすることだ。
私は彼女を会計係に任命し、先ず有り金を残らず(10万円)渡した。
そしてホテルであるにもかかわらず、明らかに生活に不足しているモノ
(タオル、シャンプー、カミソリ、歯磨き、水、ビール、食料、etc)
を買いに行かせた。アメニティーゼロ・・どんなホテルだ?・・
こうして合宿生活が始まった・・・
彼女には日本人との間に4才になる男の子がいる。(もちろん私の子供ではない!)
彼は当然日本語しか話せないが、それ以外の人は日本語が話せない。
彼女にしても日本に永く住んでいるワリには日本語が下手である。
この環境は、ただでさえわがままな幼稚園児にはイタすぎる・・・
何もわかってもらえないから癇癪を起こしまくって泣いている。
もちろん私は他人の子供に手を貸すような男ではない。
「アッシには関わりのないことでござんす・・・」で泣こうがわめこうが放置した。
違う意味で彼にとっては私も言葉のわからない外人の一人である。
しかしこの子・・どうしたって不幸である。
今後日本で育っても競争社会に勝ち抜けるとは思えず、犯罪者にならなければオンの字といったところだろう。
だからってこれからフィリピンで育ってもねぇ・・
子供を寝かしつけた後、若者たちを誘ってディスコへ出かけた。
お金は全て彼女に預けてしまったから1000ペソだけもらった。正確には返してもらった・・
5人でサンミゲルを2本づつ飲んだが、それですべて払えたとは思えない。
しかし、それしか持っていなかったから仕方がないことだ。
足りない分はきっと誰かが払ったのだろう。なんとかなる!
初日はみんなでレストランに行ったが、翌日からの食事は家のモノがホテルに持ち込むようになった。
シニガン、アドボ、ティラピア、大量のご飯・・
私は日本にいる時の朝食はコーヒーだけですましているから、
多量に運び込まれた食材とそれに群がる人々を呆然と眺めるだけである。
彼らの食べる様は日本人の目から見ると行儀が悪く見える。
彼らにとっては食事は食べられればオンの字であって、それは決して文化ではないからである。
だから「食べたくない」なんてことは絶対にあり得ないのである。
子供の一人がご飯を食べない私の顔を心配そうにのぞき込んでいた。
昼にはKFCのチキンが運び込まれてきた。
朝方多量に持ち込まれたご飯(硬い)にチキン(硬い)をほぐして食べている。
チキンライス??
「ムリだから・・・」
「ぷしゅー」3本目のサンミゲルを開けた時彼女が「ゴメンネ」と言った。
彼女が確信犯であったことは金田一君でなくたってわかる。
・・・しかしビジターゲームは思い通りにならない・・・
「ぷしゅー」4本目のサンミゲルを開けた時彼女は自分の人生を語りはじめ、そして泣いていた。
貧しい国に生を受けたことは彼女の責任ではないし、幸せをつかみたいと願うことは当然のことだ。
不幸は日本で彼女が「幸せをつかんだ」と思ってしまったことだ。
幸せなんて両手にすくった水のようなもの。
なくならないように大事にしていても、いつのまにか消えてしまうものなのだよ・・・
話は変わるが、サマーキャンプのリーダーは偉いのだ!
私のポケットにはお金がない・・にもかかわらず、朝から
「日本人は毎朝スターバックスのコーヒーを飲むんだ。今すぐ買って来い!」
「パイナップルが食べたい」と言いたい放題である。
彼女曰く「貴方みたいな日本人は初めてよ。みんなとわけ隔てなく付き合ってくれるから、みんな喜んでいるよ。」
どうやら被征服民のDNAとはそう簡単には消えないものらしい。
むしろそれはご飯を食べさせてくれる人への当然の敬意というものか?
フィリピン人はホスピタリティが高いと言われるが、本当は対象は人ではなくお金かもしれない。
もしお金がなければ手のひらを返したように冷たく扱われるに違いないようにも思える。
ともあれ、今はお金を持っている(彼女に預けてある)から私は偉いし、みんなが慕ってくれるのであった。
おりしも街はホーリーウイークとやらで静まりかえっていた。
日本で言えば盆休みみたいなもので、2日ほどほとんどの店がお休みになる。
教会だけが大にぎわいで神様の「かっぱぎ=一人勝ち」ということだ。
合宿生活に飽きてきた私はその一人勝ちの教会に連れて行ってほしいと頼んだ。
しかも「マニラ大聖堂とかサンアウグスチン教会ではダメ。トンド(スラム)を見物してキアポ教会に行きたい!」
「あなたバカ?あそこは貧乏人ばかりでアブナイ所なんだよ」
「貧乏人が貧乏人言うな!とにかく行くんだ。私の前後左右に人をつけろ。魚鱗の陣で行くぞ」
彼女は少しうんざりして「わかったから財布とか時計とかは置いて行きなさいね。
Tシャツと短パン、とにかく貧乏そうなかっこでね。」
「カメラは持っていってもイイか?」
「仕方ないな・・でも保証はできないよ」
で、キアポへ出かける。彼女が私の右腕を組み従兄弟のドライバーが左側をガード。
後方はアテとその息子・・万全の体制で車を降りる。
が、意外と平和そう。
初体験だったこともあるが以前行ったセブのサントニーニョ教会のまわりの方が物騒な感じがした。
教会でグッズを買っていると、いきなり彼女が
「神様も大変だね。毎年死んだり復活したり・・」
「それ、違うだろう!ただその記念日ってだけだろう・・そしたらクリスマスには毎年神様が生まれてるってことになるぞ。」
「あははは、それじゃ私のファミリーより多くなっちゃうね!」
帰る前日だというのに私はトンイツに興じていた。
彼女から軍資金として100ペソを貰い、今日案内してくれた従兄弟と息子の3人でジャラ銭を奪い合っていた。
ほぼ一人勝ちの状態になった頃、晩ご飯のマックが運ばれてきた。
ふたを開けるとまたチキンとご飯である。
前にも言ったがその組み合わせは私にはムリである・・・
「KFCと違ってマックのチキンは美味しいよ」と彼女。
「そういう問題じゃない!」怒る私。
ふと気がつくと従兄弟もチキンに手をつけていない。
「見ろ!彼だって食べないじゃないか!」
「違うよ。彼は奥さんがバーレーンに出稼ぎに行っていて今子供2人と暮らしている。
家に持って帰って子供と一緒に食べたいんだって」
「そうなんだ・・私の分も持ってってもらって・・あと勝った金も全部・・」
帰国する日「ホーリーウイーク」も終わり、街はいつもの喧噪を取り戻しつつあった。
帰りの飛行機は午後便だったのでチェックアウト後ショッピングモールに出かけた。
彼女が言うには「メモリー」を買いに行くのだそうだ。
「256MBのもう使わないメモリーなら会社にたくさんころがっているな・・」
もはや私にとってパソコンのメモリーをこの場でもらうことと大差がないことであった。
つまり「メモリー」=「不要物」であったし、私はリングとかアクセサリーの類を身につけることも好きでなかった。
それでもこれはサマーキャンプの修了証だと思いありがたく頂戴した。
・・私はこのサマーキャンプで一体何を学んだのだろうか?
空港でセンチメンタルな感情がわくことはなかった。
むしろ早くこの偽善の仮面を脱ぎ捨てたいと思ったから一度も振りかえらず足早にゲートをくぐった。
「パアアラム!」
偽善の仮面を脱ぎ捨てるための儀式としてビジネスクラスにアップグレードしようと思った。
空港の職員と思われる人に尋ねると
「ボス、ワタシOKネ」
カウンターに連れて行ってくれるのかと思ったら、なんと本人が売っていた!
「イカウ、ダフ屋?!で、いくら?」
「100ドルOKネ」
安すぎるとは思ったけど、ダメ元で100ドルと自分のチケットを渡した。
「ボス、コンドイツクル?ワタシニデンワスル。トモダチ、ブラックリストダイジョーブ!イレズミミエナイ!」
「オレそういうスジの人じゃないから・・・」
電話番号と名前を書いてもらう。(教えて欲しい人はワタシまで・・)
マブハイクラスの席でゆったりとウエルカムドリンクを片手にくつろいでいた。
どうやらチェックインが終わらないマヌケな客のために離陸が遅れているようであった。
しばらくしてアナウンスが流れる。
○○○○様・・オレだぁ!!!
どうやら前の席がきちんとキャンセルされていなかったようだ。
まあいい、こんな旅の締めくくりには!私はスチュワーデスを呼んだ。
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