○魔法が自分にかかったさよならパーティ
店スタッフも呆れ顔のさよなら同伴と来てネコールのダブルブッキングを企てるまではよかったが、来てネコールを受けたお客さんは律儀に開店と同時に現れた。しかし、彼女は同伴なので、開店時にはまだ出勤していない。ヘルプを相手に待たされたお客さんは当然烈火のごとく怒ります。『お前のようなやつはもう知らない。アコは違う娘を指名する』とさよならで指名替えをされてしまいます。
そのP−NA。大声で泣く、わめく、を繰り返す。当然周りの注目を浴びたお客さんはまったく悪くないのに大金を支払いこそこそと帰っていく。
同伴指名の席に戻った件のP−NAさん。笑顔であまいあまい。お客さんは複雑な笑顔。
彼女は6ケ月で何を覚えたのか。見てはいけないものが世の中に存在することを実感しました、
驚くことに彼女はリクエストで同じ店に帰って来ています。
○度肝を抜かれたさよならパーティ。
さよならP−NAの衣装がウエディングドレス。来店のお客さん席は一席だけを残しフルーツがお供え物のように飾られ、さらによく見るとワインクーラーできりりと冷えた白と深い光沢を放つ赤のボトルが鎮座している。
店内の全ての意識が唯一通常セットがほどこされた席に注がれている中、開店時間になってもウエディングドレスはどの席にも座ろうとしない。どうやら彼女は唯一の空席が埋まるのを待っているらしい。あまりに大胆な行動にさよならで呼び出しされたお客さんは怒るタイミングが無くあっけに取られている。
そこに最後の席をリザーブした主が現れる。刺すような視線が飛び交う場内。視線の先が自分であることに気づき不愉快さを隠しつつ案内された席に着く。
不思議な違和感に彼は店内を慎重に見まわし始めるとすぐに違和感の正体に気がつく。
なぜ、遅れていった自分の席は中央のステージ前にあるのか。なぜ他の席にはみんなフルーツが添えてあるのか。そんなにいっぱいのワインはどこから調達してきたのか、そしてなぜ奴はウエディングドレスを着ているのか。
謎が解けないまま時間は過ぎていく。他の席からも『私のことは気にしないで下さい』等と優しい言葉をかけられている。話しかけられ戸惑う彼の様子を見ると初対面のようだ。
その時彼の脳裏に、このままボーっとさよならのスピーチまでいてはまずい!と本能がこれまでの人生でも最大級の音量で警告を発し始めた。
『いくらでもお金は支払います。いえ、支払わせてください』と哀願するようにその場から逃げ帰った彼が私の親友です。
○そして誰もいなくなったさよならパーティ。
自宅でくつろいでいると、なじみのお店からの連絡。何?と思いつつ出ると店長の声。『実は今日さよならなんですがお客さんが一人も来てくれません』『助けてくれませんか』
『そうか、今日だったか。でも彼女なら人気者だし、誰もいないなんてことないでしょ。行ったらいっぱいお客さん今来た、なんておちはいやだよ』と探ると、『ほんとうです。誰も来てくれないことは保障します』と言われチャンスと思い速攻でお店に。
『ありがとうクヤ。あなただけがほんとのマハル』などと歓待を受ける。
一抹の不安はあるもの『頂いたかな』なんて思いながら『早くかえっておいで』と送り出す。
数日後、見慣れぬ番号から電話。出てみると、さよならパーティの彼女から。『ありがとうクヤ、わたし結婚するの。あいては日本人』と用件だけで切られる。
『ツー・・・ツー・・・』と残響がいつまでも耳の奥にこびりつき離れなかった。
○哀愁漂うさよならパーティ。
店長いわく、『あんまり人気がなくても、仕事が真面目な娘なら必要です』つまり、お店が立て込んだ場合、新規のお客さんにつけるタレントがいなくなってしまうと困るので、リザーブ的にキープしているタレントが数名必要だという事らしい。もっとも、全員がリザーブ的なタレントなんてお店もたまにありますが。
で、たまたま、さよならが複数名なのにみんなリザーブで頑張ったタレントだった。
当然(?)だけど、主役の彼女たちに指名のお客さんが無い。ほんとに無い。ワラなのです。
さよならという大きなイベントなのに、お客さんが入れ替わり立ち代りしていて、席が落ち着かない事はなはだしい。
予定を1時間遅れで始まったセレモニーもセクシーダンスつきのイレギュラー。
見ている側とすれば、さよならのタレントが一人として泣かないのに、何故かかなしくなってくる。
店長が、ノドから血が吹き出るほど一生懸命盛り上げようとする姿がまたかなしみを倍加させる。
彼女たち、性格が良いだけに哀愁を感じました。
○勘違いは気をつけましょう。
さよならのセレモニーには本人からのスピーチ、さよならのテーマ曲と来てお花をひとり一人から渡すなんてのが定番のようです。
たまに、さよらなのテーマ曲をタレントと一緒に歌ってしまうとか、お花だけを渡せば良いのにキスやハグをしてしまうとか、色々と余計な事をする人を見かけます。
それをした人がタレントみんなが公認の恋人ならば、暖かい歓声につつまれますが、そうでない場合、冷笑、失笑をうけてしまいます。
ご本人様だけが気づかないなんて間抜けな事にならない様、周りを確認してから計画は実行しましょう。
それでも、階段を一歩上がり、自分がどれだけ魔法に強くなったか試すには、さよならパーティ(黒ミサ)が最適です。
|